授業6年生

6年生「海の命」素材研究と教材分析、教材研究の仕方 ~素材研究編~

授業

さて、3学期も半ばに突入しようとしている今日この頃。本日は実際の授業ではなく、その前段階。教材分析について書いてみる。

これまで7年間色々な書籍、先輩方から学ばせていただいたことを参考にしているので、もっと詳しく知りたいよという方、ぜひこれを読むだけでなく色々な方の話も聞いてみてほしい。

では私の経験からこんな風に教材分析をすると良いということを書いていく。

この記事を読むと分かること

  • 「素材研究」とは何か
  • 素材研究、教材分析の方法
  • 「海の命」の教材分析
  • 教材研究との違い

まず、「素材研究」

素材研究とは?

聞きなれない言葉かもしれない。この言葉は野口芳宏先生をはじめとする、偉大な先人たちから教わった言葉だ。

「素材研究」とは物語そのものを読んで分析すること

指導するための教材としてではなく、単なる物語として、まずは一読者の立場で読んでみる。

感想や疑問、普段本を読む時に感じることがあるとおもう。教材文に対しても、まずは読者として授業の事は考えずに読んで整理していく。

詳しくは別の記事で解説しようと思う。

海の命 素材研究

登場人物は大きく3人

  • おとう
  • 太一
  • 与吉じいさ

これに加えて「クエ」や「母」が出てくる。

物語の大きな出来事は、2つ。

  • 父が亡くなったこと。
  • 太一がクエと出会ったこと。

ここでクライマックスはどこだろう、段落はいくつだろう、などは考えない。普段本を読む時にそんなことを考えて読む人はいない。

ただ、この段階でやっておきたいことが2つ。

  1. 感想を書いてみる。
  2. 疑問を書き出してみる。

感想を書いて感じたことを記録しておく。

普段の読書と同じように、読んで感じたことを自由に書いておく。それは子供達が初読で感じることとつながるはずだ。そうすると、純粋な子供達の反応を同じ立場で受け止められるようになる。

疑問を書き出す。

今回私の書きだした疑問は次の4つだ。

  • なぜ、父は亡くなったのか。
  • なぜ、太一は父の瀬に行ったのか。
  • なぜ、クエを打たなかったのか。
  • 海の命という題名の意味は何か。

もっと書き出す方法もあるが、私は普段これくらい大雑把にまとめている。

疑問を書き出すことで、この後の教材分析の足掛かりとなる。

ここまでで、一通り読めたら、もう一度読んでみる。今度はあらすじをまとめるように、出来事を整理していく。

教材分析 ~海の命を教材として読み込む~

教材分析とは

早速だが、私が読み込んだらこのようになった。

海の命 yuuh式 教材研究

何をしているかというと、自分で持った疑問に対して、もう一度言葉一つ一つを丁寧に読み取り、答えらしきものを導き出している。

ここでは、先ほどの素材研究とは違い、一つ一つを細かく読み取り、思考していく。

素材分析が一読者としての読みだとしたら、教材分析は一教師としての読みと言える。

私が書くときは、白石先生の書籍を参考に、2ページでまとめられるようにしている。

(上記のノートは計画性がなく、入り切っていない。そのため最後の場面が次のページになってしまった。)

ちなみに私は、

黒:素材研究で読みとった内容

青:疑問点

赤:教材分析の内容

として、何となく書き分けている。

では、早速読み取った中身に入っていこう。

太一にとっての父

「おとうといっしょに海に出るんだ。」

このセリフをどう受け取れるだろう。

おとうといっしょに。「おれも」ではない。

ここから、父親に対する憧れや尊敬がうかがえるのではないか。

太一は海のどんな表情も好きだった。

海とは、父のそのまた父と代々住み続けている大切な場所。

その父は、誰も潜れないような海に潜っている。

しかも自慢することなく。

それは幼い太一にどの様に映っただろうか。

父を失った太一

その憧れと尊敬を向けている父親が、ある日クエに敗れたと聞く。

帰ってきたのは父の亡骸。

太一はかたき討ちをしようと思っただろうか?

否、幼い太一にとって、父親は村一番の漁師であり、憧れの存在。その父が敗れた海。

普通に考えれば太一は恐ろしく思ったのではないか。近寄ろうと思っただろうか。

しかし、かたき討ちとはいかなくても、太一には父の海に行きたい理由はあっただろう。

父が亡くなった時のことは誰も知らない。

クエの話も「~という」と書いてある通り、又聞きである。

知らないところで愛する父を失った。諦めがつくとは思えない。

せめて、どこで何があったか追い求めたいのではないか。

与吉じいさに弟子入りした理由

さて、なぜ漁師ではなく、一本釣りの与吉じいさを頼ったのだろうか。

これは恐らく父の死んだ瀬に毎日いるというところからだろう。

おとうの瀬に行くために、その瀬を知り尽くしている人物に教わりたい。

何としても自分の思いを成し遂げたい。

そんな気持ちが「無理やり」な行動になったのではないか。

だが、このお願いをしたのは中学校を卒業する年の夏。

なぜか。中学を卒業したら漁師になるつもりだったのだろうか。

幼い太一の思いは中学まで続いたのか。それともある時点で出てきた思いなのだろうか。

「千びきに一ぴきでいいんだ」つり糸を握らせてもらえないのはなぜ?

なかなか釣り糸を握らせてもらえなかった太一。なぜだろう。

父の瀬にいたとされるクエは光る緑色の目。

釣り上げたタイは金色の光を跳ね返す。

のちに出てくるクエも瞳は黒い真珠よう。

この物語では海の生き物を綺麗な色で表現している。

与吉じいさは、無理やり頼み込んできた太一の思いを感じていたのではないだろうか。

その太一に魚を捕る方法を教える。だが、それは捕り方だけでなく、考え方も教えることだった。

「千びきいるうちの一ぴきをつれば、ずっとこの海で生きていけるよ。」

与吉じいさが教えたかったのは魚の捕り方ではなく、海と生きていくことだったのだろう。

村一番の漁師とは

「おまえは村一番の漁師だよ。太一、ここはおまえの海だ。」

与吉じいさに言われた太一は何を思っただろうか。

「自分では気づかないだろうが」

そう、太一は自分で自分のことを認めているわけではない。

与吉じいさから見た太一と、太一自身の捉えは違う。

だが、与吉じいさの教えは確かに太一に伝わっている。

「おかげさまでぼくも海で生きられます。」

魚を捕ることではなく、海で生きることを感謝している。

与吉じいさは「おまえの海だ」と言っている。

その続きがあるとしたらなんだろう。「好きに生きろ。」だろうか。

海に帰った父と与吉じいさ 彼らにとって海とは?

「父がそうであったように、与吉じいさも海に帰っていったのだ。」

海に帰っていったとは何だろうか。

父は海に帰ったのか。クエにやられたのではないか。

ここで考えたいのは「海」というものの捉えである。

太一は幼いころ、いろんな表情全ての海が好きだった。

だが、その後、その海に父親を奪われた。

そんな太一にとって、海は恐ろしい物になっていたと考えるのが普通である。

だが、与吉じいさから海に生かされていることを教わる。

父もよく口にしていた、「海の恵みだからなあ。」ということ。

私たちは海で生きているのではなく、海から恵みをもらって生かされているのではないか。

そう考えると、海から恵みを頂いて生きてきた二人は生を全うして海へと帰った。

そんな表現になるだろうか。

大きな問い「太一はなぜ、クエをうたなかったのか。」

さて、このように物語を読み進めていくとクライマックスで太一がクエをうたなかった理由。

色々考えられるのではないだろうか。私の考えは先ほどの画像に載せているが、ぜひ、上記の読み取り方を参考にこれを読んでいる一人一人が答えを出してみて欲しい。

そうすることで、いざ授業をする時、子供達が出す答えに対して色々な考えをぶつけられると思う。

終わりに~教材研究につなげて~

さて、ここまで簡単に私なりの読みを書いてきた。

あまりに書くことがあり、途中からどこまで載せるか考えながら書いていた。

他にも書きたい読み取りがあったので、また別の記事に載せるかも??

たった一つの物語でも教師がどれだけ深く読めるかにより、子供にどれだけ教えられるかが変わってくる。

ぜひまずは、私達教師が読むことを楽しんで、読み深めていけるようになりたいもの。

そして、ここまで来て初めて、子供達にどこをどう教えるか、「教材研究」が始まる。

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コメント

  1. 我妻 研 より:

    東京都の公立小学校教員をしている者です。
    海の命の教材研究をしていて、先生のサイトを見つけました。
    興味深い記事で、とても参考になります。

    ところで、
    さて、このように物語を読み進めていくとクライマックスで太一がクエをうたなかった理由。
    色々考えられるのではないだろうか。私の考えは先ほどの画像に載せているが、ぜひ、上記の読み取り方を参考にこれを読んでいる一人一人が答えを出してみて欲しい。
    と書かれているのですが、小さい文字が少し読みづらいのと、2ページ目が見当たらないので、もし可能でしたら、ページを更新していただけると嬉しいです。

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